Listen to silenceは
アーティストがなぜ音楽をはじめたのか
なぜ音楽を続けるのか、音楽の価値とは、など
普段楽曲の中では聴けない声に、耳を傾ける対談型インタビューです。
【Artist Profile】
森のシンガーソングライター証
森を歩く時、聴きたくなる歌を。
福井県出身。多摩市在住。シンガーソングライターとしても活動の一方、自然科学にも興味を持ち、福井県勝山市にて林業、造園業を学んだ後、岐阜県立森林文化アカデミーにて環境教育、インタープリテーションの手法を学ぶ。
現在はエコミュージシャンとして森や里山などで、自然体験プログラムと歌を組み合わせたイベント「森の歌会」を主催。
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音楽をはじめるまで
Silent it:
証さん、こんにちは。
証さんとはナチュフェス東京という
”ナチュラル”な”フェス”を”どうやって”東京”に届けるか
を考えるプロジェクトで知り合い
そこからちょいちょい会ってる仲です。
何回かライブも参加させていただいているのですが
なぜ森のシンガーソングライターなのかとか
意外と謎の部分が多いので、今回色々と聞いてみたいと思います。
よろしくお願いします!
証:よろしくお願いします!
Silent it:
早速なのですが、音楽をする前は何をしていたんですか?
証:
役者をしたりだとか演出をしたりだとか、劇団をつくったりだとか芝居のことしか考えていなかったですね。
Silent it:
そうだったんですね。そこからどうして音楽に?
証:
ただ芝居をしているままでは食べてはいけない、でも表現がしたいと思っていました。
じゃぁどうしようというときに、個人芸術をしようと思ったんですね。ぼくがやってきたことのなかで有効に活用できそうなものは歌だと思ってそれをすることにしました。
当初は一人芝居のような歌をつくっていました。
音楽自体を始めた最初のきっかけは俗な理由もありまして、好きな子がいて、その子が駅前の路上ミュージシャンにゾッコンだったんですよ笑
これならおれもできると思って始めたというのもあります 笑
Silent it:
ちなみにその恋はどうでした?
証:
かすりもしなかったです笑
Silent it:
そうでしたか笑
ちなみに演劇って個人芸術ではないじゃないですか、それでも好きだったっていうのと、今のシンガーソングライターをやってる共通点とかあるんですかね。
証:
それはですね、中学校時代学校にいけなかったんですよ、登校拒否ってやつです。
学校にも家にも当時居場所がなかったんです。
当時は人前で話すことすらもできなかった。
けどそれを心配した先生が芝居にぼくを誘ってくれて、一言だけでもいいから台詞をいってみてよと演劇の世界に入れてくれました。
芝居っていうのは小道具係であろうと、演出だろうと、主役だろうと、みんな芝居が終わるまでは居場所があるんですよね。それがすごく心地よかった。だからぼくは芝居の世界じゃないと居場所がないと思っていました。
そんななかで個人でも表現したいことがでてきた、でも芝居のなかだとそれはなかなか難しかった。だから個人芸術の分野に進んでいったんです。
森のシンガーソングライターになった理由
Silent it:
普通のシンガーソングライターから森のシンガーソングライターへ変わっていった分岐点がどこかであったのかと思うんですけど、ターニングポイントのようなものはどういったものなのですか?
証:
シンガーソングライターを続けていたんですけどまぁ売れなくて。
どれだけ自分がいいと思う曲をつくってもなかなか社会に作用していかないんですね。
ある時、売れないのにどうして表現活動を続けているんだろうと考えていました。
その時期は全然売れていないけど、アイディアはどんどんでてくる時期だったんですね、ぼくはアイディアはなにか意味をもってでてきているのだろうと思ってたけど、それがどうしてかわからなかったんです。ぼく以外の人にはそれは役に立っていないので。
それで絶望していた時にある河原の中州にひょろっとした木が一本生えていて
その幹の形とか枝ぶりがものすごいエキセントリックだったんです。
それでなぜこんな奇妙な形をしているんだろうと思いました。
それでぼくの曲も結局どこにも当てはまらない奇妙な形をしているのでぼくの曲と同じようなもんだって思っていたんですけど、問題はその木が周りの風景にすごく馴染んでいたことだったんですね。
なぜ奇妙なのに馴染むんだろうと考えて、それになにか意味があるんじゃないかと考えました。樹木の立ち姿であるとか形が、表現活動をするうえでぼくが辿り着くべき極にあると思いました。そこから音楽を学ぶより、樹木の勉強をしたほうが早いんじゃないかと考え、
林業、造園業、環境教育などの道を歩むわけです。
その後自然学校職員になって、子供たちに自然ガイドをしていた時期もあったんですけど自然学校のような業界の中で、「歌を使ったプログラムをやりたい!」とか森の中でライブを聴いてもらう、ということにチャレンジしましたが、あまり好意的に受け取られなかったんですね。
ミュージシャン以外のものになったときに気づきましたね、音楽をするには大前提としてミュージシャンでないといけないんですよ。自然学校職員が歌っても、歌うまいねとかは言われるけどそこに感動はなくて。
ぼく自身が人生をかけて「ぼくはミュージシャンなんだ」って胸を張って言わなければ音楽の価値すら薄れる。だから、ぼくはそこからミュージシャンに戻る決意をして森のシンガーソングライターとなったわけです。
Silent it:
なるほど。最初の奇妙な樹木との出会いで自分の音楽の在り方を探していく旅が始まったと思うんですけど、結局それについてはどういう風に着地したんですか?
証:
それについては樹木の勉強をしていてひとつ答えが出ていて
樹木がぼこぼこしているとか、へんな形をしているとか、自然界においては
全部機能美なんですよ。
自然界のへんな形はそうあるべくしてそうなっている、つまり機能しているんですよ。
葉っぱがギザギザなのも、枝の形も全部機能している。
世の中の美というのは、すべて機能美であると考えていいんじゃないかと思います。
つまりアートは機能して始めて美しくなる。
森のなかで歌うというのはひとつの答えなんですけど、森の景色を、自然解説を、森で寝転んでもらうのも、音楽のための機能として使う、それでその音楽自体はお客さんに森の景色をより綺麗に見せていくという循環が機能している。
音楽の機能って・・?
Silent it:
機能美についてとても面白いですね。枝が生えていく成長段階も
フィボナッチ数列っていって、
黄金比と近い比率で生えていくっていいますし。
ところでせっかく機能という言葉がでてきたので、ざっくりと”音楽の機能”とはということについて伺ってみたいのですがいかがでしょう?
証:
大震災の時に思ったことがあって
ぼくは
村上春樹が好きなんですけど、彼はその時多くの著名人がコメントをだすなか、何も発言しなかったんですね。
彼の世界はとても主観的なんですけど、ぼくはそれを追体験したいと思って読むわけですよ。でも彼は彼の世界から話すことはなにもないといって発言しないわけです。
恐らく役に立たないからだと思うんですけど、そしたら他のアーティストもほとんど役に立たないと思うんですよ。
アートが役に立つ方法ってなんだろうと考えました。
震災時にRQっていう集団があって、これはアウトドア業界の人なんですけど、普段は狭い業界で活動をしているんですね。ただ震災時はアウトドアの技術を駆使して、
被災地を助けてまわっていました。
これに近いことをアーティストもできるはずだと思いました。
アーティスト自身が自分だけの世界にこもらずにオープンに、音楽を自分だけの技として機能的に使う概念が必要です。
アーティストが自分の歌の機能を知っていればね。
ただ歌いますだけじゃなくて、自分の歌の効果を知っていればそれを求めている人を助けることができる。
Silent it:
なるほど。確かに音楽って気分を明るくするだとか、元気になるとか一般的なそういう効果のようなものがあって、それを効果として、音楽がどう役に立つだろうって考えるけど、その音楽や、アーティストのだす効果ってばらばらですもんね。業界や大枠に縛られず、自分になにができるか知るということは、音楽業界に関わらず、今後の
クラウド的な社会に必須なんだと思います。
森のシンガーソングライターが行き着く先
Silent it:
というような音楽の機能を含めて、森のシンガーソングライター証として
今後のビジョンや展望があれば教えて下さい。
証:
森というシチュエーションを最大限に活かせるアーティストになりたい。
音楽だけじゃないあらゆる手段を使って、どんな人にも本当に伝えたいことを伝えられるようになりたい。
ただ自分の世界観や知見を伝えるだけでは広がらないので、多角的なアプローチでエンターテイメント的感覚で、伝えていきたい。
そういった感覚って、演劇をやってたからじゃないって言われるんですけど確かにそうだと思います。音も光もいろいろ使いますからね。
Silent it:
それはよくわかります。ぼくもフェスづくりのときは多角的なアプローチ、空間デザインには気を使っていて、ぼくの場合演劇ではなくて教育が入り口なんですけどね。
五感情報の密度で学びは記憶に定着していき、教えではなく体験のなかで、学びは広がります。というのも教えによって、人の言葉を真似することはできるけど、脳の大外にしかそれは伝わらないです。
自分の言葉を使って人に話すから
その言葉の背景の力で他の人を動かしていきますね。
証:
あとビジョンとしては森を救うという大前提がありますね。
音楽が本当に森を救うことができるということを定着させたいですね。
音楽、アートという強力な
ツールを機能的にしていくと、本当に森を救うことができることを、ぼくだけの概念ではなく、一般的な概念にしていきたいです。
Silent it:
なるほど。ちなみに知識不足で恐縮なのですがいまの森の課題というのは
どういったことがあげられますか?またそれを解決していくとどういったことが起こりますか?
証:
森にはいくつか種類があって、自然林、人が植えた
林業の森、緑地や公園などそれぞれの使われ方があり課題があるので一口ではいえないのですが、日本人一人一人が緑とどう関わっていくのか考えるのが大事だと思います。
緑は好きだと思いますし、自然は気持ちいいと思いますが、それを自分ごとと意識していくこと、人と森をつなぐことが自分の役割だと思っています。
森というのは1つのアイコンで、他にも山海川土だとか地球にある多くのものと
共存していくことが必要で、いまあるものをできるだけ長く美しく残していくために
共生は必要です。
また樹木というのは生き方の見本にもなります。私たち人間より遥かに長生きしている樹木の生き方を学ぶことは、地球と人がどう
共存していくか学ぶことが多くあると思います。「森のように生きる」そんな生き方を学べますね。
例えばぼく自身は時間の使い方をすごく学びました。
樹木は100年単位とかそれ以上のスパンで物事を考えるんですね。
例えば竹林なんかは100年かけて腐敗した土を蘇らせます。
そう考えると小さなことは気にならなくなるし、種族としての視点を持てます。
Silent it:
確かに確かに。
人ってざっくりいうと人間としての社会的な視点と人類としての生物学的な視点が
あると思っていて、人間としての視点で見ると世界は自分の人生、または子供がどう幸せに生きられるかくらいの未来の話になりがちです。
でも樹木に習うように人類という視点で見ると、今後人類という種族がどうやったらより長く生存していけるか、という世界になり、それはイコールで住む場所である地球との
共生システムを調整していく話になり、樹木を大切にしていくという循環が生まれるかもしれませんね。
【証さんが最も影響を受けた曲】
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第2回は
森のシンガーソングライター
証(あかし)さんでした!
証さんへのインタビュー中こんな言葉がありました。
「音楽は魔法だと思います、だから自分の使う魔法が何なのか知っている必要がある。
責任をもって魔法をかけないといけません。」
音楽には自分の魔法があり、あなたの魔法がある。音楽はひとつの概念ではなく、それぞれの手に持つひとつの武器だと。。
すごく証さんらしい言葉だなと思いました。
音楽を魔法として有効に機能させ
循環を生み出し森と人の橋渡しをする証さんの曲は
森でライブを聴いてこそ、より伝わり響くものがあります。
そして現在は
と題して日本中の森をキャンピングカーで回り魔法をかけていく
プロジェクトが始動中!
ぜひぜひチェックしてみてください!
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「 Listen to silence 」では
アーティストの静かな想いを引き出し形にします。
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”どんな場所でも最高の音楽空間に”
Silent it